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JOURNAL List

Chapter 1. 原点 - Origin -

思考の記録:一杯の汁物から始まった、NORTHの原点
すべての始まりは、信州の山あいで振る舞った一杯の汁物でした。

海産物の出汁に頼らず、信州本来の山の素材と「味噌」の力だけで、その旨味をどこまで引き出せるか。
その問いへの答えは、百五十年の歴史を持つ老舗蔵「糀屋本藤醸造舗」の味噌にありました。

二種類の味噌を、繊細な比率で合わせる。
ただそれだけで、驚くほど深く、澄んだ味わいが立ち上がったのです。

その時、私はこの地に受け継がれてきた文化の底力を確信しました。
この完成された味わいを、調味料という枠を超えて、もっと多くの人に届けたい。
その純粋な衝動が、NORTHの原点となりました。

効率を優先すれば、失われてしまう繊細な風味があります。
だからこそ、私たちは素材が持つ本来の力を一切の濁りなく抽出し、
自らのブランドで、新たな一品へと昇華させることに決めました。

自分の子供に誇れないものは、つくらない。
大切な方に胸を張って贈れないものは、世に出さない。

「遥 -haruka-」は、信州の伝統を菓子という価値に託して繋ぐ、最初の一形(ひとかた)です。

Chapter 2. 蔵の深み - 150 Years -

思考の記録:受け継がれる手仕事。百五十年の蔵が守るもの
「機械で一定の味は作れる。でも、それ以上のものには、必ず人の手が不可欠なんです」

創業明治二年。信州須坂の「糀屋本藤醸造舗」の職人は、静かにそう語りました。
自然の温度変化に寄り添い、菌の呼吸を五感で確かめる。
効率を超えた先にある、この蔵にしか出せない味わいを、彼らは今も守り抜いています。

時代と共に食の形は変わっても、この地には、守り続けるべき圧倒的な価値がある。
「ここに糀屋があったという事実を、確かな味として残したい」という職人の矜持。

その想いに応えるために。
「遥 -haruka-」の核には、長野県知事賞を受賞した最高級味噌「匠白」と「匠赤」の独自のブレンドを選びました。
百五十年の時が醸した深みと、職人の手仕事が生む温度。
その重みを、私たちはバウムクーヘンの一層一層の中に、大切に閉じ込めました。

これは信州の伝統を、今の暮らしの中で分かち合うための一つの形です。

Chapter 3. 素材の対話 - Craft -

思考の記録:「引き算」の先にある、素材の本質
小麦粉を使わず、白砂糖ではなく「きび糖」を選ぶ。

それは、単なるこだわりではありません。
百五十年熟成された味噌の複雑な香りと、素材が持つ本来の輪郭を、一切の濁りなく伝えるために行き着いた「必然」でした。

味噌の風味を最大限に生かすために選んだのは、淡路島産の「生米粉」。
米の細胞を壊さない特殊な技術で挽かれた粉が、飲み物が不要なほどのしっとりとした質感を生み出しました。
古くから日本の食卓を支えてきた「米」と「味噌」が、バウムクーヘンという新たな形の中で、分かちがたく結ばれた瞬間です。

余計な飾りを削ぎ落としたからこそ、熟成味噌がもたらす深い味わいは、シャンパーニュの泡や重厚な赤ワイン、あるいは熟成された日本酒とも見事に調和します。

忙しい一日の終わりに、心安らぐひとときを愉しむための大人の嗜好品。

大切な方の健やかな日常を願う想いと、嘘のない本物だけを届ける。
百五十年の歴史を、遥か未来へと繋ぐ。その願いのすべてを、この一輪に込めて。

Chapter 4. 遥かなる未来へ - Brand -

思考の記録:なぜ「遥」という名を冠したのか
「遥 -haruka-」という名には、一つの意志を込めました。

信州須坂で百五十年紡がれてきた時間を、
遥か彼方の未来まで、濁りなく繋いでいく。

なぜ、味噌を届ける形が「バウムクーヘン」だったのか。
それは、積み重ねられた歳月を、同じように「時間を塗り重ねる」ことで表現したいと考えたからです。

職人が火の前で生地の状態を見極め、一層ずつ丁寧に塗り重ねていく年輪。
その重なりは、この地で受け継がれてきた歴史の歩みそのものです。

この積み重ねがなければ生まれない、しっとりとした密度があります。
それは、長い年月をかけて熟成された味噌の「底知れぬ旨味」を受け止めるための、最高の調和でした。

これまで積み上げられてきた「過去」を、
今の時代に「形」に変え、
まだ見ぬ「未来(次の百年)」へと手渡していく。

この一輪を切り分けるとき、そこには百五十年の香りと、
遥か先までこの価値が続いていくことへの、私たちの願いが重なっています。

Chapter 5. 重なりゆく年輪に、時間を預ける - Harmony -

思考の記録:なぜ、味噌を届ける形が「バウムクーヘン」だったのか

それは、百五十年の歳月をかけて醸された味噌の深みを、
同じように「時間を塗り重ねる」ことで表現したいと考えたからです。

職人が火の前で生地の状態を見極め、一層ずつ丁寧に塗り重ねていく年輪。
この重なりが生み出す「しっとりとした密度」こそが、
長い年月をかけて熟成された味噌の「底知れぬ旨味」を受け止めるための、最高の調和でした。

かつて信州の家庭で、囲炉裏の火を囲みながら、
時間をかけて作られた汁物が人々の心と体を温めてきたように。
このバウムクーヘンもまた、一層ずつ積み重なった時間が、
手にする人の心を静かに満たしていくことを願っています。

信州の厳しい冬が育んだ発酵の文化と、
職人が一層一層に込める一途な手仕事。
その二つの「時間」が溶け合い、一つの形になりました。

この一輪を切り分けるとき、そこには百五十年の香りと、
私たちがこの地に寄せる敬意が、等しく重なっています。

Chapter 6. 次の百年を願う、贈り物の形 - Legacy -

思考の記録:なぜ「百年味噌」と名付けたのか

このバウムクーヘンに使用している味噌を、私は「百年味噌」と名付けました。
それは単に百五十年の歴史があるからだけではありません。

この一輪を手に取る方、そしてその大切なご家族や子供たちの代まで、
健やかな繁栄が、さらに「次の百年」へと続いていくように。
その切実な願いを、この名に込めています。

信州の厳しい冬を越え、じっくりと熟成された味噌は、
命を繋ぐための知恵と、作り手の慈しみが凝縮された結晶です。
その「濁りのない力」を、現代の菓子という形に変えて届けること。

それは、私たちが今、この地で預かったバトンを、
次の世代へと手渡していく作業でもあります。

自分の子供に、そして大切なあなたに、
「これは良いものだ」と胸を張って言える、嘘のない本物。

「遥 -haruka-」という名が指し示すのは、
過去から受け取った想いを、次の百年という遥かな未来へ繋いでいく、
贈り物という名の「約束」です。

Chapter 7. 厳選の譜:北坂養鶏場と淡路島の恵み - Materials -

「百年味噌」の強い個性を支えるのは、私の故郷、淡路島の北坂養鶏場で産まれた卵です。
多くのシェフが信頼を寄せるこの卵の中でも、私たちはあえて、地元にしか出回らない「不揃いサイズ」の新鮮なものを選びました。

形は不揃いでも、その中身は命の力に満ちている。
濃厚なコクと雑味のない後味は、味噌の塩味と溶け合い、バウムクーヘンに深い奥行きを与えます。

それを繋ぐのは、同じく淡路島の「気流粉砕」による生米粉。
日本人の身体は、古来より「米」を消化し、糧にする構造を持っています。小麦(グルテン)に頼らない選択は、単なるトレンドではありません。
現代の日本人が、食後に重さを感じず、心から「健やかだ」と思える食体験。
この「米粉と卵」の組み合わせこそが、味噌の力を最大限に解き放つ、NORTHの揺るぎない土台です。

Chapter 8. 抽出の理:なぜ「匠」をブレンドするのか - Technique -

私たちが選んだのは、長野県知事賞を受賞した最高級ソムリエ味噌「匠白」と「匠赤」。
なぜ、一つではなく「ブレンド」なのか。

それは、単一の味噌では到達できない「味の立体感」を作るためです。
甘みが際立つ白味噌と、深い発酵のコクを持つ赤味噌。
この二つを、職人の感覚でしか成し得ない「黄金比」で合わせることで、バウムクーヘンの甘みの奥に、複雑で重厚な余韻が生まれます。

また、精製された白砂糖を避け、「きび糖」を選ぶ理由もそこにあります。
ミネラルを豊富に含むきび糖の柔らかな甘さは、味噌の塩角(しおかど)を丸く収め、素材本来の香りを引き立てます。

「引き算」の先にあるのは、ただの菓子ではありません。
日本人の身体に馴染む素材を研ぎ澄まし、味噌という伝統を、今の私たちの細胞が喜ぶ形へと昇華させる。
その理論と情熱のすべてを、この一品に注ぎ込んでいます。

Chapter 9. 響き合う「あまじょっぱさ」の正体 - Alchemy -

思考の記録:なぜ、食塩を一粒も加えずに、この味に辿り着いたのか

「遥 -haruka-」を一口含んだとき、誰もがまずその「あまじょっぱさ」に驚き、そして深い余韻に浸ります。
しかし、このバウムクーヘンのレシピには、味を調えるための「食塩」は一粒も含まれていません。

その正体は、百五十年という歳月が醸し出した「百年味噌」そのものにあります。

熟成を重ねた「匠白」と「匠赤」のブレンド。
そこに含まれる天然の塩味を、無塩バターと生クリームの豊かなコクが包み込む。
そこに「きび糖」の柔らかな甘みが加わることで、口の中で完璧なコントラストを描き出すのです。

外から加えた塩ではなく、発酵の過程で素材と一体化した塩味だからこそ、角が取れ、まろやかで奥行きのある「あまじょっぱさ」へと昇華されます。

日本人は古来より、味噌や醤油といった発酵調味料を通じて、この複雑な味わいを愛でる感性を育んできました。
私たちの身体に馴染む素材を研ぎ澄まし、余計な添加に頼らず、素材の対話だけで引き出す。

塩を加えない。
それは、素材が持つ「完成された力」を信じ切ったからこそ辿り着いた、NORTHだけの答えです。

Chapter 10. 境界を超える、食の愉しみ - Pairing -

思考の記録:信州のワインと地酒。酒を呼ぶ「パンチ」の必然
「遥 -haruka-」を一口食べて、「しょっぱい!」と感じたなら、それは私たちが目指した正解に辿り着いた証拠です。

中途半端な「塩スイーツ」にするつもりはありませんでした。
甘みの奥に、熟成味噌が持つ本来の塩気と発酵の力強さを、あえて鮮烈な「パンチ」として残す。
ここでも、味を調えるための食塩は一粒も加えていません。
百五十年の歳月が醸した味噌の純粋な塩分だけで、このエッジを立たせています。

その力強い輪郭があるからこそ、この一品は菓子の枠を超え、信州のワインや地酒と響き合う「大人の嗜好品」へと昇華されました。

信州の冷涼な気候が育んだ、酸の美しい白ワイン。
果実味の凝縮された赤ワイン。
そして、米の旨味が活きた純米酒や、琥珀色の熟成日本酒。
それらと真っ向からぶつかり、互いの輪郭を際立たせる。

お茶やコーヒーの「お供」で終わるのではなく、酒を呼び、夜の静寂(しじま)を深く愉しむための一片。
この贅沢なペアリングこそが、私たちが目指した「再編集」の終着点です。

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